斉藤幸平氏の「脱成長コミュニズム」の指針と労働者協同組合(ワーカーズ コープ)法成立はプラウト主義経済の萌芽

2021年1月


2020年の去年から、斎藤幸平氏の『人新世の「資本論」』 集英社新書  という本が話題になっている。
斎藤幸平氏は、カールマルクスについて徹底的に深く研究するという切り口から、資本論とは少し違う晩年のマルクスの考察が、地球環境問題と文明危機を克服 する社会の方向性である「脱成長コミュニズム」の経済思想を導いていたという事を初めて明らかにしている。今まで日本のマルクス主義研究者の中ではこのよ うな 斬新な見解は導びかれなかった異色の研究者です。
私はカールマルクスについては通説と同じように、資本論は唯物論的な思考で資本主義の仕組みを明らかにした経済論で共産主義宣言で示すその唯物論的で機械 論的な国家独裁中央集権政治経済システムが共産主義のソ連邦の崩壊などの限界を明らかにしただけの業績だと考えていました。
斎藤氏の「脱成長コミュニズム」という新しい経済社会像は、生産手段を「私有」の資本主義や「国有」の共産主義でもない「市民有」での労働者協同組合 (ワーカーズコープ)などに転換し、私有企業の希少価値・利潤追求のみの大量生産・消費・廃棄を生む経済から脱し、市民の本当に必要な使用価値に基づく生 産経済に転換すべきと説いています。
私はそれに加え、この資本主義経済はこの世だけが存在の全てでその刹那的な物質や金銭欲のみ追求の人間の唯物論的世界観を原動力とし、それが大量生産・消 費・廃棄経済を生んできたという事も指摘したいと思います。
これは、プラウト主義経済(正式名:進歩的活用理論)や私の共生民主主義政治経済などとも、表現は違えども危機を克服する全く同じ社会の方向性です。プラ ウトについては日本語ウィキペディア「進 歩的活用理論」を是非ご覧下さい。
それに共通しているのは人間や経済学などの唯物論的世界観・価値観の克服とそのような上位下達中央集権社会システムから下意上達水平協働社会システムへの 転換の必要性です。
最新の地球の生態系や複雑系などの研究はその地球や生物などのシステムが下意上達水平協働的に行われていることを明らかにし、量子力学などは霊的世界の存 在を実証しています。人間社会文明の諸問題と危機はそのような地球の生態系のシステムに人間の社会関係やそのシステムも回帰することで共生し初めて克服さ れてゆくのだと思います。
また、このような新しい経済社会が深化した高次の段階では、貨幣経済は廃止されて自治的コミュニティーによる必要性・使用価値や友愛精神などに基づいた最 新の科学技術を応用した直接生産供給や物々交換などを行う自給自足的社会に移行するでしょう。そのような自治的コミュニティー(現在の市町村)を最小単位 として現在の国は州となり地球連邦政府も創設され緩やかな連邦制による水平協働社会と民主主義を改良したサドヴィプラという高い道徳性と精神性を持つ賢者 達の選出による政治が行われると思います。これはプラウトが提唱している高次の段階での社会像です。
中矢伸一氏の「神道経済」も日月神示での神から見た本来人間社会でも行われるべき高次の正しい政治経済の在り方を纏めたもので、本来は神の所有物(神有) であるものを頂いているのでそれに感謝して生活する、奪う経済から与える経済への転換などの視点が加わりますが同様の社会像を示しています。
しかし、現在の貨幣経済を継続せざるを得ない段階においては、プラウトの提唱する具体的な諸政策などの実施で共産主義の悪平等ではない適度な機会均等など の自由を持ちつつ最低限所得保障の実施や格差を縮小させ、斎藤さんの「脱成長コミュニズム」の視点による労働者協同組合や以前からの協同組合やNPOセク ターの拡大によって大量生産・消費・廃棄経済からの克服を目指して行く中で、上記の将来の貨幣経済廃止の高次社会に移行する環境が整って行くのだと思いま す。また、この高次の貨幣経済廃止の実験的な自治的コミュニティーを志ある人達が先行して始めてみる事やその具体化詳細像である「プラウトヴィレッジ」を 提唱している久保田啓敬氏(現在この方の著書が発売中)もいます。

斎藤幸平氏のツイッター久 保田啓敬氏のサイト


2020年12月4日第203回国会において、日本で初めて労 働者協同組合法(ワーカーズコープ法)が成立した。この成立には、日本労 働者協同組合連合会などの長年の粘り強い政府への働きかけがあったようで、東京新聞などメディアはその内容を解説付きで報道している。
私はまさにこの労働者協同組合法成立はプラウト主義経済実現への萌芽だと感じている。


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